LUNKHEAD曲解説ブログ,  青に染まる白

明日 おだか

[vivo]は自分の中で
世界に訴えたい衝動が溢れるほどあって
ほとんど歌詞を書く時に悩むことがなかった、と
[vivo]の曲のブログで書いたけど
この衝動は[vivo]で出し尽くすんだろうな
ということも思っていた。
(これも書いたか…)
で、本当に[vivo]を作り終わって
すっからかんになってしまって。

自分の中での葛藤があった。
世の中からはどう見えてるのかはわからないけど
[vivo]みたいなアルバムを作って
歳も30代になって
今更また青臭い曲を作っていくのか…?
みたいな。
今聴くと[vivo]もまあ
中二と言われればそうだけど
でも自分の中では[vivo]は
子供を通じて見えた社会に向けて放った
怒りとか憤りとかやるせなさだったり
それでもその手に触れたぬくもりを
決して離さないでくれよっていう願いだったり
祈りだったり
少なくとも自分の中では
それまで歌ってきたような
半径1メートルの世界とは違うテーマがあったので
大風呂敷を広げちゃった後で
何を歌えばいいんだろう?
みたいな思いがあったのです。

で、ある時ぽつっと
明日って明るい日って書くんだなあ、と思って。
30年間生きてきて考えたこともなかった。
明るい日と書いて明日。
明日なんて何が起きるかわからないじゃないか。
真っ暗闇かもしれない。
でも、明るい日で明日なんだなあ。
なんだかガビンときた。

それで出来たのが明日という曲だった。
最初に書いた歌詞は

ビルとビルの隙間に捨てられたみたいな
誰にも期待されない今日が終わる

ってところだったと思う。
ん?いや、サビだったかな?
頭の。
でも割とこの曲のスタートラインというか
ここからこの曲が始まるっていうか
この言葉、めちゃくそネガティブな言葉だけど
なぜか俺はこの言葉が出てきた時に
もう一人の自分が
缶ビールのプルタブをプシュッとして手渡してきて
お疲れ様、まあ一杯やろうや
と言ってきたような
そんな、なにか妙な安堵感を感じた。
とにかく、今日が終わることだけに救われるみたいな日
明日のことなんて考えたくない、みたいな日
誰にも期待されない
ビルとビルの間に捨てられた
ビニール袋だったり空き缶だったり
なんでか洗剤の空き容器だったり
そんなこの世の誰にも必要とされないゴミみたいな
俺の今日だったとしても
俺は俺の今日を生き延びたんだって思うような日
そんな日ないですか?

明日の歌詞は、他は
もう読んでもらったままなので
説明の余地がない。
歌詞が書けた時
ああ、これはもう一生自分のそばにいてくれる曲だし
一生俺はこのままで
ダサくて青臭くて泥臭い曲を作っていけばいいんだ
と思った。
そういう意味でも
青に染まる白が始まった曲でした。

もうちょっと盛り上がる曲になるかと思ったけど
そこまでいかなかった。
どっちかというとテンポの割にマッタリ曲で
(歌詞のせいか…)
なかなかセットリストに入れづらいポジションなので
あまりバンドでやることは多くはない。
けども個人的にはとても大事な曲なので
最近では毎年その年の歌い納めが定番になっている。
(ここ何年もずっとその年最後のライブが弾き語りなので)

なんていうか
気に入っている、とか
よくできた、とかじゃなく
自分の心臓みたいな曲だなあと思う。
だからブサイクだなあと思うし
ダサいなあとも思う。
けれどもとても大事な曲。
とか言うと
こっちは良いと思ってるのに
自分でブサイクとかダサいとか言わないでください!
って意見がたまに来るけど
どんなに周りにイケメンて言われてても
自分で鏡見て
ウーン…俺ってマジイケメン!!!
って言ってる人、なんか嫌じゃないですか?
そのくらい自分自身だし大事な曲ってことです。

明日には実はちょっといわくがあって
俺の弾き語り始まりからのバンドインからのギターリフ
0:15からの。
あれが最初なかったんです。
裏でなってる壮のアルペジオのフレーズが
リフ扱いで
そのままレコーディングして
で、クロスロードの井上さんからミックスがあがってきて
それを聴いてボビーが
なんかもっと象徴的なギターリフがあった方がいい
と言い出したのです。
言い出した、というか
もう言って聞かなかった。
これって、みんなよくわからないと思うけど
ミックスされた音源て
新築の家みたいなもので
たとえギターフレーズが一本足されただけだとしても
設計図から変わっていくので
ミックスダウンされた音源に
新しくギターリフを足すということは
建てたばかりの家を取り壊して
更地に戻して
設計図を書き換えて
新しく建て直す
それくらいのことです。
一曲のミックスにはかなりの時間がかかります。
新しくフレーズを録ってミックスを1からやり直すということは
井上さんのその苦労も無に帰す。
それをボビーはさらりと言う。
曲を、バンドを、ライブを良くするためなら
それ以外のことはどうでもいい。
お金も人間関係も
それでなくなるようなら最初から要らない、みたいな。
結果、誰からも愛される。
今思うとボビーは誰よりもアーティスト気質だったなあ。
でも、ただ投げっぱなすだけで
まあ考えるのは俺じゃないんだけどね!
って無茶ぶりしてくるだけだから
アーティストではないな!
で、俺と山下君でフレーズを考えて
ギターを録り直し
もう一度ミックスし直してもらったというわけです。

あと、家から駅までの間に公園を通るんだけど
(行きつけのベンチがある例の公園)
冬だったなあ
そこを通って家に帰ってた時
本当に風船が飛んでたんです。
頼りなく、ふらふらと。
夕方のちょっと前だったなあ。
ただの風船。なんでもない風船。
だけども俺は
なんだか、頑張れ!と思ってしまった。
あの頑張れ!は
自分に言っていたんだなあ。

あー
今聴き直してて
なんだか泣けてきちゃったなあ。

明るい日と名付けた 暗闇の中でその日を
明るい日と呼んだ まだ何処にもないその日を
届かない日もずっと
叶わない日もずっと