[vivo],  LUNKHEAD曲解説ブログ

ゲノム おだか

ゲノムは
ひとつのコード進行でどんどん展開していって
どんどん壮大になっていく
Sigur RósのGlósóliみたいな曲を作りたくて
そこから作り始めていった。
Bメロだけちょっとコード進行が変わるけど
それ以外はイントロ、Aメロ、サビ、後奏
F#/D→Gadd9→A→F#m→A→Bm7→A→Gadd9
のコード進行がひたすら続く。
ただ、リフの部分だけはちょっとトップのテンションが違ってて
独特の緊張感がある響きになってる。

実家に帰ると、楽器がアップライトピアノしかないので
ピアノを弾く。ほぼ弾けないんだけど。
ただピアノの響きは好きで
ギターだと絶対押さえられない和音がいとも簡単に鳴らせるし
ギターだとんん?と思いそうな和音がピアノだとすごく綺麗に聴こえたりするし
ベースも弾けるし和音も弾けるしメロディも弾ける。
ピアノさえあれば何でもできちゃう。
ピアノは楽器の王様って話
本当にそうだなあと思う。
弾けないけど。

で、ピアノで考えたあるフレーズがあった。
2010年の夏かな?
そのフレーズは別にゲノムのため、というわけではなく
何となくピアノを弾いてたら浮かんで
なんかいいなと思っていつか使えたらと胸の奥にしまってただけなんだけど
アレンジを練るためにスタジオに入ってた時
どうも山下君がフレーズが浮かばなくて
あれが使えるかも、と思って引っ張り出してきたら見事にハマった。
ただ、コードがそのままだとちょっとテンションが合わないので
俺のバッキングのテンションをちょっと変えた。
それでリフだけちょっと響きが違うってわけです。
でもそれが良かった。

[vivo]の正式表記だと
vivoの外側に変なカッコが付いている。
あれは化学でいう重合体を表すカッコで
普段活字で使われることのないカッコだから
もちろん普通には出てこないので
便宜上[vivo]と書いてるんだけど
重合体ってなんぞや?という人にざっくり説明すると
ポリエチレンとかポリ塩化ビニルとか聞いた事あると思うんだけど
それの、ポリ、の部分が重合体の事です。
で、例えばポリエチレンだと
エチレン(C2H4)って物質が無数に連なっているのがポリエチレンなのです。
だけど
…C2H4-C2H4-C2H4-C2H4-C2H4-C2H4-C2H4-C2H4-C2H4…
って書くととても大変、っていうか書ききれない。
なので
[C2H4]n
と表記して、これはC2H4がn個(nは要はめちゃくちゃ沢山って意味)鎖状、網状に連なってますよ
って事を表している、とても便利なカッコがあれなのです。

で、vivoはスペイン語で生きているって事を表す言葉で
命って、それだけで存在しているわけじゃなくて
縦にも横にも無数に繋がっているんだなあと思って
今自分が生きている事自体が
鎖状に網目状に沢山の命と繋がっているという事なんだと
それで思いついたのがあの表記だったのです。
俺らはみんなでひとつの命の重合体なんだと。
それを教えてくれたのが子供でした。
親がいてじいちゃんばあちゃんがいて
ご先祖様がいて子供がいてその命の鎖の中に自分がいる。
なんだか不思議な感覚。

ただ、人が人と生きるという事は
いい事だけじゃない。
自分に子供がいるという事は幸せな事ばかりじゃない。
目の前に広がるこの世界に潜む痛み悲しみ憎しみ
それは全部人が人と生きるせいで生まれる。
それでも人は人と生きてかなきゃいけないし
誰もが誰かを愛するために、誰かに愛されるために
俺らみんな生まれてきたはずだと
俺は思いたかった。
ボビーに説教臭いと言われたけども。
人が人と生きる事で生まれた沢山の痛み悲しみ憎しみを
[vivo]で歌ってきたけど
やっぱり最後に人を信じて終わりたかった。
「僕はあなたに未来をもらった」
って歌詞は俺が[vivo]の中で一番好きな言葉です。
この言葉で[vivo]を締めくくる事が出来てよかった。

これはもう究極だなあと自分で思って
子供に向けて歌う曲はこれで打ち止めにしようと思った。
これを超える思いはもうないな、と思った。
けど、また出来てしまうのであった…

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