[vivo],  LUNKHEAD曲解説ブログ

螺旋 おだか

今の4人で初めて作ったのは何も怖くなどなかっただけど
[vivo]向けて曲を作り始めて最初にできたのは螺旋だった。
だから螺旋のデモの仮タイトルはNo.1
[vivo]もだいぶ曲をたくさん作った気がするけど
その最初がこれっていう。
全体の構成も、イントロのフレーズも音色も概ねデモから変わってないので
デモの段階でこのイントロだった。
山下君は、ついに小高が狂った、と思ったらしい。
まあ、ちょっと変だよなあ。
なんで思いついたんだろ?
F# F F# F F# F F# F ていうとても不安になるフレーズ
山下君と後で検証したら、半音で行き来している音階が一番耳につくらしい。
それを知ってて作ったのかと思ってた、と言ってたけど知らんかった。
確かに、踏切も半音差の音の和音(一番気持ち悪い和音)で
やばいよ!やばいよ!という警鐘を鳴らしているように感じる。
あれが物凄く美しい和音だったらあんなに気にならないかもしれない。

フレーズも音も気持ち悪いしさらに7/8拍子にして切迫感を煽っている。
LUNKHEADで一番速い曲だと思う。確か。BPM210だったかな?
(BPM=ビート パー ミニッツ、1分間に何回四分音符が入るかっていうテンポの単位です。BPM60だと秒針のテンポと同じ、ということになります。)
あまりにちょっとぶっ飛んでるので
自分では気に入ってたけど、これはボツかな?と思ってた。
けど無事採用ということになった。
デモだとただの気の狂った感じの曲だったけど
みんなで合わせるとさらに気の狂った感じになった。
アウトロは7/8拍子で進んでいるんだけどなぜか俺だけ4/8拍子でフレーズを弾いてて
みんなが4小節演奏すると28拍、で俺はそこで7小節弾くと28拍になってみんなに出会えるっていう
無駄にめちゃくちゃなことをしている。
同じアウトロを演奏しているのに俺だけ違う時空を彷徨っている感がひどくて
めちゃくちゃ集中してないと迷子になっちゃう。

音もめちゃくちゃ攻めてて
コンプガチンガチンだし
バスドラムの音なんか多分、トリガーだと思うって桜井さんが言ってた。
トリガーとは
簡単に言うと
桜井さんが踏んだバスドラムの振動は普通は音になってマイクがそれを拾って
オーディオファイルとして記録される。
だけどトリガーマイクはその振動を電気信号で送ってMIDIデータとして記録するマイクで
つまりどういうことかというと
情報としては間違いなく桜井さんが踏んだバスドラムの音を
どんな音にも変えられる、ってわけです。
なので生音じゃ絶対に出ないようなバッキバキの音にできちゃうわけです。
メタルとかツーバスでドドドドドドってやるジャンルは
音の粒立ちをはっきりさせるためか、使ってる人が多い気がします。
で、螺旋、ドラムもバッキバキだしミックスも超限界まで音をぶっこんでるので
マスタリングの時にエンジニアさんが
海苔みたいになった波形を見て呆然としていた。
普通は音の強弱があって波形は波の形にギザギザしている(波形っていうくらいだからそりゃそうだ)
だけどコンプギンギンで音を突っ込みまくると
海苔みたいな波形になるのです(だから本当に海苔って言う)
迫力があって今風でかっこいい音だけどずっと聴いてると耳が疲れる。
だけど[vivo]の時は攻めたかったのでこれでよかった。
[vivo]は内容的にそもそも曲も詞も重たいので
そもそもアルバム一回通して聴くと結構お腹いっぱいになっちゃうから
敢えて自然とこの音像になっていったのだと思う。

歌詞は、友達が飛び降り自殺をしちゃった女の子の歌なんだけど
この曲は他の曲に比べて
特別訴えたいことがあったというよりは
言葉遊びの要素が強かった。
[vivo]ってタイトルについてはゲノムの時に書こうと思うんだけど
螺旋は遺伝子のイメージで
親、その親、そのまた親……と繋がってきた命の鎖を意味してる。
(もちろん螺旋階段、というイメージもある)
一番は死んじゃった友達
二番は残された自分
のことを歌ってる。

命の繋がりなど夢幻のようなもので生きて行く所以が見つからない
的な意味を漢文風に(ウソ漢文だけど)
螺旋夢幻見不所以(らせんむげんみえんゆえん)
命の鎖を断ち切ってその子に見えたものは何だったのだろうか
っていうのが一番で

無限のようにつながってきた命の繋がりはその由縁を消すことはできない
螺旋無限消不由縁(らせんむげんきえんゆえん)
腐りきったように生きた果てに何を手にするのだろうか
っていうのが二番

あと、一番の鋼鉄の空に対しての
二番の柔らかい肌が
対比として絶妙だったなと、自分としては思う。
柔らかい肌、っていうのは
命の温かみを表現してる一方で
簡単に消えてしまう脆さ、みたいな意味も込めてる。

個人的にはすごくうまく書けた歌詞でとても好きです。

ライブだとサビのハモりを壮と悟と二人ともに歌ってもらってて
全員で歌う曲は盛り上がるあるあるで
螺旋もとても盛り上がる。
ただ俺らが盛り上がりすぎるとどんどんテンポが上がって
速すぎてお客さんがノれない時があるらしい。
気をつけねば…
このハモりのラインもちょっとセオリーじゃなくて
主線がミーファ#ーミファ#ーミファ#ーミファ#ーなところを
普通なら3度下でド#ーレード#レード#レード#レーと行きそうなところを
メジャー7thに行ってて
シード#ーシド#ーシド#ーシド#ーになってる。
これで余計に不穏な感じが助長されてて気にいっている。

[vivo]の歌詞カードに載せる時にやりたい表記のデザインがあったんだけど
グロいからやめろって言われてできなかったのを
歌詞集でまだスタンドプレーで北井君とやり取りしてた時に
そうだ!今なら誰にも文句言われないしあれやっちまえ~!!
と、北井君にやってもらっちゃいました。
なので、歌詞集ではあの時俺が本当はやりたかったデザインになっております。
お楽しみに!グロいけど。