LUNKHEAD曲解説ブログ,  V0X e.p

音のない部屋

音のない部屋はAT0Mの曲作りの段階で
かなりメンバーは手応えを感じていた。
Bメロから出来て
そのままBメロと同じメロディでサビに入って
途中から展開していくっていう
LUNKHEAD的には新しいパターンで
ルートAに対してドミナントのEから始まるBメロの
E→F#m7→DM7→Eは
曲が展開していく感じなんだけど
サビの
A→E→F#m7→C#m7→DM7→A→Bm7→C#m7→DM7→E
で一気に曲が開けていく。
そのコード感の違いで同じメロディが全然違う印象に聴こえるのが
とてもうまくいったなあと自分で思う。
ただ、とても綺麗な曲だったので
メンバーもメロディを活かさねば、と
ドラムもおとなしいし、ギターもクリーントーンでアルペジオ、みたいな
なんかそれが軟弱な気がしてどうも気に入らなくて
俺からボツ宣言をしてしまった。

で、V0Xを作り始めた時に
やっぱりあれはもったいないよな、と思い
もう一回、一から作り直した。
まず、元々の段階でAメロがどうもイマイチだったので
なんかないかな?と色々考えてたら
箸にも棒にもかからなかったボツ曲の中で
Aメロだけめちゃくちゃ気に入ってたやつがあって
それを当ててみたら見事にハマった。
(そのボツ曲のタイトルはオアシズだったことをなぜか覚えている
多分、オアシスっぽいの作りたかったんだろう)

それで、Aメロ、Bメロ、サビ、としっかりと曲の骨組みが出来た時に
俺の中で完全に曲の方向性が見えた。
「これはグランジだ!!」
スタジオでメンバーに
「目指すはグランジだ!龍はシンバルを叩き続けろ!壮はファズを踏め!歌を聴くな!」
みたいなことを言った。
グランジみたいなベースは、どんなか、わからんかった。
明らかにメンバーは動揺していた。
あからさまに方向性が変わりすぎていたから。
ただ俺の中で確信があった。
必ずこの曲は化ける。
いつもならメンバー全員が同じ方向を向けないと進まないけど
この時ばかりは信じてもらった。

問題はベースだった。
ドラムはとにかくバカスカ叩いてもらえればいいし
ギターはとにかくアホみたいに歪んでいればいい。
けどグランジみたいなベースってなに?

悟も同じことを思いながらめちゃくちゃ悩んで家路に着き
手元にあるグランジ(ニルバーナとか)を聴き漁ったそう。
で、その結果わかったのが
グランジのベースってほとんど低音のルートしか弾いてないんだって。
ルートしか弾かない=合田悟の本懐ではない
うおおお!!どうすればいいんだあああ!!
となった挙句
結局いつも以上に高音トゥルペトゥルペなあのフレーズに行き着いたっていう。

次にスタジオで合わせた時にその話を聞いて爆笑した。
さすがや…笑
悩んだ挙句まったく逆の方に舵を切るとは…
でもあのベースラインで逆に
全体的なボヘーと歪んだサウンドの中にちゃんとLUNKHEADらしさを作れたような気もする。
しかもライブだとこれを弾きながらハモっているわけで
変態だなあ。

そんで、Dメロっていうのか、2サビ後の3拍子になるところ
ここ実はすごいコードというか転調が複雑で
頭の中で鳴るままに作っていったんだけど
自分でもよくわからん。
波のように押し寄せてくる例えようのない淋しささえ
のところは
F#m7→E→D→A→F#m7→E→D→A
で、まあ普通にAメジャーで
忘れてしまうのが
のところが
GM7→A#dim→Bm7→E
ここはDメジャーの範疇なのかな
で、
怖い悲しい愛しい
のとこで
Gadd9→Esus4→E
これはAメジャーに戻っての7thのG的な

書いて整理すると、まあまあ普通だな…
なるほど、そういうことだったのか…
でもよくできてるなあ。

そうやって曲はどんどん完成していった。
そして歌詞だ。
歌詞をどうしよう…
このセンチメンタルグランジにどんな歌詞を当てればいいのか…
相当書き直したと思う。

結局書ききって出来上がったものは
なんだか珍妙に思えた。
これは…歌詞なのか…??
自分では納得できるものが書けて
これが正解なんだとわかってるんだけど
歌詞というよりは超ショートショートの短編小説を読んでるみたいで
どうにもこう、歌詞っぽくない気がした。

ただメンバーの反応が良かった。

メンバーの歌詞の見方もそれぞれで
龍はがっと読んで、いいと思った時は顔をあからさまにほころばして
めっちゃええやん、と言ってくれる。
悟は歌詞をプリントした紙をつまんで眺めるように流し読みして
「いいんじゃない?小高らしくて」と、あんま興味なさそうに言う。
壮は
歌詞をずーっと読んでる。
何も言わず微動だにせずずーっと読んでるので
そわそわして、「今どのへん?」と聞くと
「今まだ1サビ」と答えたりする。
どれだけじっくり読んどんねん!!
言葉のひとつひとつの深い意味を読み解きたいのだそう。
嬉しいことだけど。。
あんまりじっくり読まれるのも恥ずかしい。。

で、歌い込んでるうちに歌詞もスッと染みこんで
歌入れの時には完全に曲と詞と歌と演奏がひとつになってた。

歌詞が書けるとアレンジもちょっと変わる。
昔は歌詞が歌入れの当日の朝までどうしても書けなかったりして
歌が体に入ってなくて
ちゃんと歌ってあげられなくて悔しい思いをしてた。
だから基本筆は重いんだけど
なるべく早く歌詞を書いてちゃんとスタジオで歌い込んで歌入れに臨めるように
自分の中でのデッドラインを変えるようになった。
それが音源の歌声にも反映されてると思う。

歌詞のモチーフはハチミツとクローバーのリカさんなんだけど
図書館の脇にある小さな公園は実在する。
当時住んでいた家のすぐ近くに図書館があって
その脇が小さな公園だった。
子供を抱っこして夕暮れ時によく暮れなずんでいた。
夕方の公園は子供達で溢れていて
お母さん達は井戸端会議してて(もちろん加われるわけない)
家路に着く人達が公園の横を通り過ぎていく。
その光景をいつもただぼーっと眺めていた。
あの、穏やかな夕方の独特の
すべてがほどけて、すべてが許されるような
泣きたくなるような、胸の奥が詰まるような
淋しいような、満ち足りたようなあの感覚は
新居浜で、物心付いた時から
自分の中でずっと変わらない感覚なのだと思う。

音のない部屋は、やっぱ今もすごい好きな曲です。
というか好きな要素しかない。
時が経って逆に、当時の自分の言葉に共感する要素も増えてきたし。
桜井さんがまた、音のない部屋が好きで
ライブでもかなりやってますなあ。
みんなダハーッ!!としてるから(悟はトゥルペトゥルペだけど)
轟音に包まれてる感じがやってて気持ちいいんだよなあ。

(Vo.G.小高芳太朗)