AT0M,  LUNKHEAD曲解説ブログ

トット

窓際のトットちゃん
という本を知っている人は多いと思う。
黒柳徹子さんの幼少期の自伝小説。
その黒柳さんがユニセフの親善大使を務めていた時の事を綴ったエッセイ
トットちゃんとトットちゃんたち
という本に、高校の時に出会った。

トットはスワヒリ語で「子ども」って意味だそうで
(黒柳さんの愛称がトットちゃんなのは言わずもがな)
タンザニアを訪問した時にそれを知って
とても嬉しかったそうです。
世界中のトットちゃんたちに会いに行ったトットちゃんのエッセイ
それでトットちゃんとトットちゃんたち

ただ、内容はタイトルとは裏腹に
とてもショッキングだった。

戦争、病気、飢えに苦しむ子どもたち
あまりに辛い内容なので
人によっては読んでて苦しくなるかもしれない。

ある場所では大人が子どもを戦争の道具に使い
親の愛も知らないまま兵隊に仕立て上げ人殺しをさせる。

ある場所では家族が明日生きるために
少女が売春をする。
エイズが怖くないの?と聞くと
怖いけどエイズになっても何年かは生きられるから
自分が売春しないと家族が明日も生きられない
と少女が答える。

ある場所ではゲリラが村を襲い
男性は殺され、女性は犯され
子どもは将来復讐できないように手足を切り落とされる。

ある場所では疎開先から帰ってきた女の子が
家のぬいぐるみを抱きしめたら
疎開してる間に爆弾が仕掛けられていて
ぬいぐるみと一緒に女の子が吹っ飛んだ。

ある場所では親のない子に地雷原を歩かせて
そのあとを大人たちが歩く。

そんなことがずっと書かれている。
文体は穏やかだけど
黒柳さんの静かな激しい怒りとトットちゃんたちへの愛に溢れている。

小学校からずっとお年玉から毎年5000円ユニセフに募金していたんだけど
もっと何かできないかな、と思い
高二の文化祭で石川龍内閣の総務だった事を利用し
(うちの高校は生徒会長が人事をすべて決められるスタイルだった)
ユニセフからパネルを借りたり
自分でもとりのこ用紙に世界中の子どもたちのことを書いたりして
教室をひとつ借りて募金活動をしてみたりした。

ただ、あの頃は17歳といっても俺もまだ「子ども」だったので
トットちゃんたちと同じ目線だったと思う。

自分が大人になってやっと
トットちゃんの目線でトットちゃんたちを思うようになった気がする。

インドで出会った破傷風の少年が
死にかけの体で、動かない口で黒柳さんに
「あなたの幸せを祈ってます」
と言ったという。

どんな気持ちでそんな言葉が言えるのか。

自分は全くそんな崇高な魂を持ち合わせてはいないけど
歌にしたいと思った。

インドの少年を猫に重ねて

どこかではじまっただれかのおはようが
そのひのおやすみまでどうかつづきますように

って歌詞は、世界中のトットちゃんたちが
どうか今日も生きのびておやすみを言えますように

どこかでうまれおちたまだちいさなそのゆめが
いつしかそのみらいをどうかてらしますように

は、トットちゃんたちが明日も明後日も来年も10年後も20年後も
生きていてくれますように

っていう思いを込めた。

自分が死ぬ時に、誰かの幸せを祈っていられるような人生でありたいと思った。

この曲はドラムじゃなくてカホンなんだけど
龍のアイデアで最後サビまではEQでハイを下げて
わざとくぐもった音にさせてる。
鼓動を表現してるんだって
あばらの浮いた猫の最後の、でも確かな鼓動。
この曲の持ってる優しさを鼓動みたいなカホンがすごく引き出していると思う。

静かで淡々としていて地味な曲だけど
自分にとってはとても大事な曲です。
(毎回言ってるな…)

(Vo.G.小高芳太朗)