LUNKHEAD曲解説ブログ,  孵化

海月

LUNKHEADの曲は結構どれもスルメ曲と言われることが多い。
俺としてはめちゃくちゃ一撃必殺な曲を作ってるつもりなんだけど…
そこらへんのズレが売れない理由なのかもしれない。
まあ、スルメでも味があるならいいけど。
けど海月に関しては胸を張って言える。
スルメ曲だと。
アルバムを作る中でやっぱ一曲くらいこういう渋い曲が欲しくなってしまう。
全員4番打者でもねえ。

アレンジが結構凝っていて

1番終わりから出てくる壮のフレーズがエンディングではハモリが加わったり
1番終わりのリイントロではまだジャッジャッジャッと刻んでる俺と悟が
エンディングでは刻まないバッキングと流れるベースラインになってたり
前半はタイトに刻む感じが後半にかけて広がっていく。
画用紙に塗った水彩絵の具を、水を含んだ絵筆でなぞって
それがだんだん淡く滲んでいくみたいに。

蒸し暑い気だるい夏の夜の「現実」から
だんだんとあの夜の「幻想」に世界感が変わっていく。

で突然不協和音で終わって現実に戻ってくる。
あの不協和音も、いちばん気持ち悪く聞こえるコードをみんなでいろいろ試したなあ。

2サビ後のお祭りのお囃子っぽいところからの
ひっそりひっそりひっそりひっそりのところも
レコーディング中なんか面白くしたいねとみんなでめちゃくちゃ考えた。
ひっそりひっそりと一呼吸で言い切りたいんだけど長すぎてどうしても途中で息が切れてしまう。
なので何テイクか録って、わざと前半ブレスを入れたテイクと後半にブレスを入れたテイクを途中で繋ぎ合わせた。
そんでエンジニアの佐藤さんがそれを
懐かしさと寂しさで胸の奥が侵食されていくような素晴らしいミックスにしてくれた。

何でか歌詞を悟に捧げるって俺が言い出して
(何かネタというか、テーマがあった方が書きやすいのだ)
夏と女の子が大好きな悟の一夏のアバンチュールというテーマで書き始めたら
最終的に全然違うテーマになってめちゃくちゃおセンチな歌詞になってしまった。
(それはそれで結果オーライだけど)
ごめん、さっくんめちゃくちゃいい歌詞になっちゃった。。
と言って見せた気がする。
悟はとても気に入ってくれた。

新居浜は人口13万くらい?確か当時。
今は12万人くらいのようだ。
少しずつ減ってるのか。。

街を歩いていて人と肩がぶつかるなんてことはない。
なので不良に肩がぶつかって喧嘩を売られるなんてこともない。
人と肩がぶつかるのは
毎年7月の終わりにある花火大会と
10月にある太鼓祭りと
あとは初詣くらい?
(東京に出て来た新居浜のやつが皆口を揃えて必ず言うのが、「毎日祭りか…」だった。俺も言ってた。)

国領川の河川敷で行われる夏の花火大会は
俺らにとってそれはもう年に一度の大イベントだった。
小さい頃は親や友達家族と来ていたが
俺らはもう高校生
はっきり言ってリビドーの塊だ。
エロいことがしたくてたまらない。
女の子とイチャイチャしたくてたまらない。
そんな俺らにとって花火大会とはデートに誘う格好の舞台だった。
結局男同士で遊びに行って
デートしている同学年の男女に遭遇したりすると
ひやかしたりからかったりして
いつもはオラオラしている野球部のデカいあいつも
恥ずかしがって妙に照れちゃって
「や…やめろよ…」って言っちゃったり
その横で彼女も顔を赤くしてたり

そんでこっちは男同士
なんだ!この敗北感!!
残念極まりないわ!!

とか言っちゃって
俺も高三の夏はしっかり
浴衣を着たみゆきちゃんと花火大会に行った。

そんな俺らの青春とリビドーが渦巻いた
新居浜の花火大会を思い出しながら歌詞を書いていたら
うっかりいい歌詞になってしまったというわけ。

これラジオかLINE LIVEで言ったけど
暑い夏の歌でタイトルが海月だと涼しげでいいな〜と思って
歌詞にも出てくるし
海月ってタイトルを提案したら
満場一致でよいと言われたんだけど
元LUNA SEAのマネージャーだったボビーだけが
いやそれ海と月ってLUNA SEAじゃん
とブツブツ言っていた。
無視した。

ていうか、LUNA SEAだったら
海月じゃなくて月海じゃないか。

昔はあんまりウケなくて全然やらなくなったけど
最近割と需要がある気が…する…
どうなのだろう…

(Vo.G.小高芳太朗)