LUNKHEAD曲解説ブログ,  孵化

教室

教室はそんなにライブでやらないけど
実は個人的にはめちゃくちゃお気に入りの曲で。
メロディも詞もアレンジも、とても完成度が高い。
この曲も割と安産で産まれた気がする。
なんか、あんま行き淀んだ記憶がない。
行き淀むって日本語あんのか?
とにかくとても俺は好きな曲なのだ。
雰囲気としては帰り途Ⅱみたいな気持ちで作ったと思う。
構成も似ている。

とにかくメロディがまず良い(と俺は思っている)
そして全体の流れの構成が抜群に良い。
俺の弾き語りからミニマムに始まって
いきなりサビでドッパーンと広がる感じ。
サビ前のBメロのコード進行
F→Am→Dm→Em→Fm7→Esus4→E
のアンニュイ感がサビの爆発力を増す燃焼材になっているのだ。

ベースラインも秀逸で、めちゃくちゃ綺麗なメロディだと思う。
かといって俺が俺がではなく主線を引き立てる絶妙な合いの手。
ディスイズ合田悟。

真っ赤な夕暮れの景色が広がるような雄大な壮のソロも良いし
全体的に気だるい龍のドラムも良い。

全員で詞と曲に沿って風景を描き切れた曲だな~と思う。

そんでミニマムに始まって
ダッハー!!と広がって最後また寂しく終わるのも
歌詞とめちゃくちゃハマってて良い。

で、1番、2番、ベースソロ、ギターソロ、落ちサビ、大サビ、エンディングまであって
4分ちょっとっていうのがすごい。
え!!こんなに食べて豆腐一丁分のカロリーなんですか!??
みたいな。

落ちサビは俺のアルペジオなんだけど
アルペジオのフレーズを考える時はとにかく
音が途切れない運指を心がけている。
どうしても指が次のポジションに移動する時には
その音は途切れてしまうので
その音の途切れがないアレンジにはこだわってる。いつも。
うちにかえろうの頭とか。
そんなの誰でもだけどね!

中学時代
いじめ、というほどでもなかったけど
そういうのが俺にもあった。
集団で一人をからかう。
聞こえよがしに「俺、小高キラーイ笑」そして笑い声
すれ違いざまに姑息に手を出してくる嫌がらせ、そして笑い声
そういう時の、普段仲良くしてる友人たちが目を逸らすあの孤独感。
学校にも行きたくなかったし、部活にはもっと行きたくなかった。
まだ音楽に出会う前だった。
小さいコミニュティが世界のすべてだった。
それでもひたすら思った。
こいつらはこの小さな町でその矮小な精神で小さな人生を歩んで小さく終わるんだ。
俺は絶対にこいつらの手の届かないところに行く。

今、それができているかは置いといて
そう思うことが当時の俺の心の拠り所だった。

こんな虫ケラみたいな奴らのために自分が傷つくことの方が勿体無い。

そんなことを思い出しながら歌詞を書いた。

教室という言葉は
逃げられない世界の象徴だった。
(そして俺は中2で、千葉の母方の実家の押入れから発見したおかんのアコースティックギター(今も使ってるやつ)に出会い世界が変わる)

東京に来て、夕方はとても大事な時間になった。
何かで書いたけど
新居浜にいる頃はずっと山際に住んでいたので
気づいたら真っ暗だった。
あんまり雄大な夕暮れを意識したことがなかった。
こないだ新居浜に行った時に
それなりに広い夕暮れを見たけど
結構町の東側だったんだよな。
考えてみたら
いつも自分の西側には何かがあった。
中学の時は武道館があったし
高校の時は弓道場の中だった。

もっと言うと空を見上げるという感覚がなかった気がする。

東京に来て一人になって
初めて夕方の空を見上げるということを知った気がする。

東京駅から新宿方面にバイクで走っていた。
新宿通りだった。

俺はそれを独りで見ていた。

あの、すべてを許すような
すべてを浄化していくような圧倒的な
オレンジ色にピンクや紫が混じった
あの恐ろしいほどの夕暮れを。

それから
俺にとって夕暮れ時は魔法の時間になったんだと思う。

(Vo.G.小高芳太朗)