LUNKHEAD曲解説ブログ,  孵化

id

idはリフからできましたね~
なんかこう、曲も詞も勢いだけで作った気がする。
構成もコード進行もめっちゃシンプルで
FとGとAmしか出てこない。
あれ?3つ?
もしかしてLUNKHEADの曲で一番使われてるコードが少ない?
基本的にリフもAメロもサビもF→G→Amの進行で
間奏だけ
AメロのパターンをフックにしてAmだけで攻めてる。
あとアウトロが
F→Gなんだけど
ちょっと普通のFとGじゃなくて
これはなんと説明したら良いのか
FM7+4、G69的な?
そこらへん独学なのでよく分からない…
4弦2フレット(ミ)、3弦2フレット(ラ)2弦開放(シ)がずっと鳴ってて
6弦のみ1フレット(ファ)と3フレット(ソ)で展開していく。
イントロのバッキングも実はそうで
ここだとF→G→Amなので
Amの時は5弦開放を弾いている。
同じルートはF、G、Amなんだけど
そうやって上に乗ってくる和音を変えているので
そんなにシンプルに聴こえないのかもしれない。
まあ、FとFM7とFadd9じゃ同じスケールで作られてる同じFでも全然違う響きだからなあ。
歌詞もわーっと書いたので
行き詰まった記憶があんまりない。
と言っても多分行き詰まってるんだろうけど…
わーっと書けた時って
書いてた時のこともそれまでのことも全然覚えてない。
ただ気づいたら目の前に出来上がった歌詞がある感覚。
いっそ光は消えないの?
ってとこが自分としては一番山場の歌詞だと思う。
半端な希望って余計にしんどかったりする時あるよね。
それでも
生きたい生きたいと泣いてくれてることが
俺にとって希望だったりもするからややこしい。

アウトロのギョワー!!とした感じ
それまでのずっとタイトに全員で刻んできた感じから一気にダウナーに落ちていくのが
物語の完結としてとても気に入っている。
かなり忙しいことしてるなあ、みんな。
生き急ぎ感がすごい…

タイトルのidだけど、最初は俺は「井戸」がいいと言っていた。
なんか、真っ暗な夜の闇で見上げた満月が
深い井戸の底から見上げた小さい空みたいだったから。
真っ暗で真っ黒で深くて真っ暗で真っ黒な穴の底から見上げた
いっそ消えて欲しいくらいの絶望的な光に見えたから。

壮は、井戸いいね~と言ったんだけど
龍と悟が、どうしても井戸と言われると
当時流行っていたリングの貞子のイメージしかないと
井戸はちょっとない、と言われてしまった。
だけど歌詞の内容的にも絶対井戸っていうキーワードは無くしたくなかったので
なんとかうまい言い回しはないだろうか?と、いろいろ探したら
idって言葉に行き着いた。
日本橋ヨヲコ先生の短編集「バシズム」の中にidって作品があって
ほお、これイドって読むじゃんそういえば
でも意味載ってないな。。どんな意味だろ。。調べよ。。

id : 精神の奥底にある本能的衝動の源泉

わあ、めっちゃ歌詞にあてはまってるじゃないか!こ、これだ~!!
ってことで、idってどう?ってプレゼンしたら
チリバツでみんな賛成してくれ
そうやってidっていうタイトルは生まれた。
今となっては井戸じゃなくてidでよかった。
龍と悟が井戸を拒んでくれたおかげでより意味の深いタイトルになった。
なので今更ですが読み方はアイディーじゃなくて「イド」です。

実は素晴らしい世界じゃなくてidが個人的にはシングル推しだったんだけど
歌詞が結構刺激的なので大人ウケがあんまり良くなかった。
なのでまあアルバムの中でも大したポジションにならないのだろうな
と思ってたんだけど
曲順会議で思いがけず
龍が1曲目はidだと思うって言い出して
それで1曲目に収まってしまった。
前にも何かの曲で書いた気がするけど
アルバムの纏う雰囲気って絶対1曲目で決まってくるから
孵化はやっぱりidに引っ張られて
割とダークなアルバムとして認知されることになった。
初期のLUNKHEADが帰ってきた!
なんて言われることも多かった。
idの影響はジャケットにもめちゃくちゃ出てる。
idが1曲目じゃなかったらこのジャケットにはならなかったと思う。

idは展開がシンプルで、Aメロも緊張感があり
かつサビで一気に開けるのでライブでも盛り上がりやすい。
サビで一気に手が挙がるのはとっても気持ちいい。
そしてREACT2にも選ばれるくらいの曲になった。

だけど実はこの曲、今の俺らには因縁があって
2009年4月2日下北沢GARAGE
初めて桜井さんドラムでライブした日
メンバー全員、客席の異常な緊張感に呑まれて
割とヒドいライブをしてしまい
その中でも特にidはリフのリズムを全員が見失って
時空の狭間を彷徨う羽目に陥るという
思い出したくもない思い出を作ってしまった曲なのです。
あの日のライブ後
GARAGEの外でフロアタムのケースに腰掛けながら(普段そんなことしない)
真っ白な灰のようになって遠い目をしていたマスター桜井を
俺は一生忘れることはできない。

そこからよく盛り返したわあ。
今じゃすっかりライブ中盤の必殺曲に成長した。
なんかこう、派手な花形選手じゃないんだけど
確実に仕事する業師的な
巨人の篠塚とか川相みたいな?(若い子知らんか…?)

(Vo.G.小高芳太朗)