FORCE,  LUNKHEAD曲解説ブログ,  アルバム

奇跡

2005年の秋から冬にかけて
俺らはセカイイチとスプリットツアー
セカイランクツアーをしていた。
そこでセカイイチはPAさんを乗り込みで連れてきてたんだけど
なんとその方がNUMBER GIRLのPAをしていた西川一三さんという方だった。
俺はもちろん舞い上がったが
ボビーはしれっと
ついでにうちもお願いできませんかね~?
などと不躾極まりないお願いをぶちかました。
やめとけ!!と思ったけど
一三さんは天使のように朗らかな人で
いいですよ~と快諾してくれてしまったのだ!!

そして時は流れ2006年の多分、夏
一三さん主催の
一三さんがPAを担当しているバンドだけを集めたイベントが
リキッドルームであるというので
セカイイチに入れてもらった。
セカイイチの他に
MO’SOME TONENDER、クラムボンとかとか
そうそうたるメンツで
好きなバンドばかりでとても楽しみにしていた。

特にモーサムは本当にただのファンで
音源もほぼ全部持っているし
昔の新宿にあった頃のリキッドワンマンにも行ったし
新宿タワー屋上のヘルマンとの合同インストアライブも見に行ったりしていたし
モーサムの野音の時は自分もCLUB Queでライブで
リハから本番までの空き時間でなんとか野音まで行けないかと
真剣に悩んだりもしたし(当然行かなかったけど)
なので野音のDVDは死ぬほど見て
未だに見るたびに死ぬほどシビレあげてるくらいなので
ドキドキしていた。

お客さんパンパンで
セカイイチはとてもいいライブで
(ていうか、セカイイチってみんな上手いし面白いし
よくないライブ見たことない。
とてもいいか、ものすごくいいか、どっちかしか見たことない)
クラムボンは圧巻だった。
で、クラムボン終わったらめちゃくちゃ人が帰っていった。
そしてイベントがめちゃくちゃ押して
大トリのモーサムのライブが始まったのはなんと23時
見たくても電車がないから帰らなきゃって人も大勢いたと思う。
あんなにパンパンだったのに
リキッドのホールは無残なほどすっかすかで
なんだか俺が申し訳ない気持ちになってしまった。
帰ってしまった人たちに怒りすら感じていた。
そんな俺の気持ちをモーサムは粉々に打ち砕いた。
あの日のモーサムのライブを俺は一生忘れない。
もう本当に、めちゃくちゃカッコよかった。
凄まじくカッコよかった。神がかってカッコよかった。
ロックバンドの矜持を見た。
あの日のモーサムを見れてよかった。
セカイイチありがとう。

という壮大な前振りでした。
奇跡と一個も関係ない。
いや、なくはない。
あの日モーサムはYou are Rock’n Rollという曲を演奏してて
ライブってものは不思議で
いつも家で聴いてる音楽が全然違う風に体に入ってくることがある。
まあ、爆音だし、目でも見てるから当然かもだけど
とにかくあの日のYou are Rock’n Rollは特別だった。
そしてこういう
スタッカートとシンコペーションを使ったリフを
全員で弾く曲を作りたいと思った。
多分俺らそれまでそういうタイプの曲なかったと思う。

壮がメインリフを弾いて、俺はコードバッキングで
悟は色々超越したところでトゥルペトゥルペ
みたいなのが多かった。

それで考えたのが奇跡のリフってわけであります。
あの日リキッドに行かなかったら
そこでモーサムがYou are Rock’n Rollをやってくれなかったら
生まれなかったと思うと
人の世というのはつくづく巡り合わせなのだなあと思う。

で、当時壮の先輩が座長を務める劇団があって
舞台がある度に見に行っていたんだけど
そしてその頃に行った公演のタイトルが
「見えないものが欲しいもの」で。

いつも見に行くと打ち上げまで誘ってくれたので
だいたいいつも打ち上げまでお邪魔させてもらっていた。
(お芝居の人たちの慣例らしく、昼夜2公演の5デイズとかでもちゃんと毎日打ち上げする
っていうのが驚愕だった!!)
そこで俺は、このお芝居で歌詞を書く、と宣言した。

で、奇跡の歌詞を書いたのです。

ただ、まんまお芝居の内容というわけでもなく
そのお芝居を見て俺が感じたことを書いて

で、さらに当時、のちに影と煙草と僕とAX撮ってもらったり
うちにかえろうとか閃光とかのMVを撮ってもらった
早稲田の理工学部の写真部からの友達の浅野君
(電通テックの社内リクルート用の楽曲も作らせてもらいました)
の家が四谷にあって
ちょいちょいみんなで未だに集まるんですけど
ベランダでタバコ吸ってた時に
一緒に吸ってたイチベエ(本名)が
新宿の空を見上げて
こんなに夜の雲が綺麗に見えるのはこの街だけだよね…
ってボソッと言って
なにそれ!かっこいい!!
と、いただいちゃったっていう。

夜の雲が綺麗に見えるのは
街の光が反射するからで
新宿という街の
善も悪も
美も醜も
幸も不幸も
成功も失敗も
蠢いている人々の人生や感情すべてが照らした
その雲の美しさなのだと思うと
移ろいでいく雲のなんと儚いことかと
そこですべてが繋がった気がして
それで奇跡はああいう歌詞になりました。

新宿は本当にまるで雲のように
人も街も常に移ろいでいくなあと思います。
入り浸っていた20年前とはまるで違う町になってしまった。
良くも悪くも。

もっと邪悪だったし汚かったしゲスかったし
人間くさくて居心地がよかった。
何もかもが刹那的で
明日になったらすべてが泡と消えそうで
生きているだけで奇跡みたいだった。
夜が明け切った頃の
やっと力尽きたような
歌舞伎町の空気が好きだった

誰もが痛みを抱えて笑っていた
誰もが気づかれないように泣いていた

(Vo.G.小高芳太朗)