LUNKHEAD曲解説ブログ,  アルバム,  シングル,  夏の匂い

夏の匂い(後編)

そしてそして話はMVへ。
こういう企画は全力で乗っかっていくタイプの俺らは
どうせならMVにもCMの二人に出て欲しいよね!
って話に当然なった。
アー担(アーティスト担当の略、メジャーのレーベルはそれぞれアーティストにアー担と言われる、所謂音源にまつわるマネージャーみたいな人がつく。でもレーベル内の音源にまつわるマネジメントだけなので、ライブとかのマネジメントはプロダクション、事務所がやる。ここの線引き難しいし、事務所とレーベルがごっちゃになってる一般の人多い。しかも事務所とレーベルが一緒になってるパターンもあるので余計にややこしい)の姉帯さんもボビーも
こういうのが大好きなのでノリノリだった。
多部未華子さんは当時まだ駆け出しで
でもブレイク必至の女優さんだったので
半年後だったらギャラ払えんかったと思う。
ギリ、ギリセーフ!!
北条隆博君と共に、出演依頼したら快くOKしてもらえた。
監督は下山天さん
下山天さんもめちゃくちゃ大御所の映画監督なんだけど
本当に気さくで柔らかい人で
本物ってこういうことなんだろうなあ…としみじみ思った。
鼻にかけない威張らない見下さない
俺らにちゃんとリスペクトがあって。
ちなみに、チュプキタバタの和田君が誘ってくれた
ブルーハーツが聴こえるのアフレコで
俺は1001のバイオリンを担当させてもらったんだけど
人にやさしくを撮ったのが下山天さんで
俺は直接はお会いしてないんだけど
その話を和田君に話したら
天さんに話してくれて
天さんも懐かしがってくれてたみたいで
めぐりめぐって意外なところでまた繋がれたのが嬉しかった。

そしてMVの話に戻るんだけど
俺はやっぱりあのCMをハッピーエンドにしたかったので
せっかくCMの二人に出てもらうのだから
あのCMの映像に至るまでのストーリーを描いたらどうなんだろうか?
と提案した。
そしたらCMと曲とMVがひとつになった
壮大なプロジェクトになるじゃないか、と。
それで天さんが描いてくれたストーリーがあのMVなわけです。
めちゃくちゃ良い。めちゃくちゃ良いMVです。
見てると心が浄化されます。
二人とも一流の俳優さんなので当たり前だけど
最初のお互い意識しあって照れちゃってるところから
淡く恋が始まっていく表情の変化
セリフがなくてもすごくナチュラルに伝わってきてすごいです。
そして彼氏の上京の決意を聞いた時の多部ちゃんの表情
電車を見送る時の多部ちゃんの表情
しかもその時の田舎くさいダサい衣装
すべてが最高です。
個人的には川っぺりで多部ちゃんが指キスするところがエモいです。
かー!!青春だねー!!!かゆいねー!!!
ちなみに冬のシーンも夏に撮ってるので
コート着てマフラーしてんのはさぞ暑かったろうに
汗ひとつかいてないのすごいです。
鹿島鉄道を借り切ったり
一体、いくら予算がかかってるのか見当もつかないです。
おっかね~(金だけに)
レコーディングもだけど
勝負どころだ!とMVにも予算をドカンとビクターが出してくれました…
そう、このMV、電車が大きなファクターになっていて
2人の恋が始まったのも
恋を育てていくのも
そして彼が旅立っていくのも二両電車なんです。
その二両電車に乗って彼がまた彼女に会いに帰ってくるっていう
うーん…ニクい!!

北条君は
上京してレコーディングエンジニアになるために
今はアシスタントエンジニアをしていて
俺らがまさに夏の匂いをレコーディングしてる現場にいて
夏の匂いを聴いて多部ちゃんとの思い出を思い出してるっていう
心憎い設定なんですが
なので俺ら北条君にはお会いしてるんです。
その後のAXワンマンも見に来てくれたし。
でも多部美華子さんにはお会いできてないのです。
地方ロケだけだったから。
(AXワンマンにはお花を出してくれた…!!)
だけど、フォズトーンの竹ちゃん(多部美華子大好きすぎギタリスト)は
それでも羨ましい!!と、会うたびに言っていた。
いや、ほんとすごいと思いますわ。
俺らのMVに多部美華子さんが出てくれてるって。

で、このMVを見てからCMを見ると
めちゃくちゃいいんすよ。
めちゃくちゃ泣けちゃうんすよ。

俺も、高校出て東京来て
みゆきちゃんは神戸に行って
俺らは遠距離恋愛をしてて
親とか大人はそんなの続くわけないとバカにしてた。
それでも俺らは信じてた。
でもあっけなく終わりました。
大人が正しかった。
だからこの二人もいつか別れてしまう日が来るのかもしれない。
だけども今は永遠を信じていてほしい。
そういう思いを込めて二番の歌詞を書きました。

誰もが子供だと笑うけれど
夢の見過ぎだと笑うけれど
それなら僕らは子供のままで
夢を見ていたいよ

MVの中で北条君は東京で頑張ってて
そんで夏の匂いの中で帰省してて
でもって最後CMで二人が会うっていう
敢えてのCMを着地点にしたことで
CMと夏の匂いとMVが本当に見事にひとつに繋がったな~と思う。
本当にたくさんの人たちの熱意と協力と尽力があって
このストーリーは出来上がった。
みんなで勝ち取った感がすごかった。
だからこそ、13年も経った今でも
これだけみんなに愛される曲になったんだと思う。

もうすぐ夏が来るなあ。
ツアーファイナルのリキッドルームエビスの日
7月19日
俺ら誰も覚えてなかったけど
夏の匂いの発売日だそうです。

スポットのナレも多部未華子さんがやってくれてるんだよなあ…
この表情、演技とは思えないよ
すごいなあ

(Vo.G.小高芳太朗)