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夏の匂い(前編)

夏の匂いはLUNKHEAD史上いちばんデカいタイアップをもらった曲だ。
やっぱり未だに好きな人が多いし
地方で対バンする地元の若いバンドで
LUNKHEAD好きです!!
って言ってくれる子でも
夏の匂い聴きたかったッス!!
って言われる事がよくある(ミーハーめ!と思う)
未だに俺らの代表曲のひとつだけど
そんな夏の匂いのリリースから13年も経っていると思うと震える…
干支こえとるやん……

2006年の春
カナリアダイアモンドツアーの心斎橋クアトロの日
ディレクターナベさんが呼んで、大阪までライブを見に来てくれたのが伊藤さんという方だった。
CMを作るのにはいろんな人が携わっているそうで
伊藤さんはその中でもCM音楽を担当する、音プロと呼ばれるポジションの人で
伊藤さんは前進/僕/戦場へを聴いて俺らを気に入ってくれて
森山直太朗さんやスキマスイッチが担ってきた
カルビーの夏ポテトのCMソングを
ぜひLUNKHEADでやりたい!と言ってくれて
わざわざ大阪まで来てくれたのだった。
ただ、こういうデカい企業のタイアップは事がすんなり行かず沢山の関門がある。
で、伊藤さんが言うには
まず、監督を落とさないといけない…と
超大御所の監督なんだけど
ちょっと偏屈で、露骨に君が好きとか夏とか
そういうベタな表現を嫌う人なので
夏とか好きとかっていうワードを使わずに
夏の淡いラブソングを作ってほしい
しかもロックバンドにこんな事言うの失礼だけど
監督は、今回はバンドじゃないな〜って言っていたので、あまりロックじゃない曲を作ってほしい
と。
そしてさらに
それでも僕はLUNKHEADでやりたい!!
と熱く言ってくれた。
ぜひやらせてください!!
と、二つ返事で
ここから俺らの戦いが始まった。

大阪から帰る夜走りの機材車の中
ずっと曲を考えていた。
明け方東京に戻って、早速その日のうちにナベさんも含めてみんなでスタジオに入った。
ちょっとメロが弱いかな…とか
いろいろアイデアをぶつけあって
そうやって夏の匂いの原型はできた。
CMで使う分にはとりあえずワンコーラスあればいいので
ワンコーラスだけ作ったものを急いでプリプロ(仮レコーディング)したんだけど
麹町のスタジオだったっけかなあ?
サビの歌詞を4パターン書いたなあ。
伊藤さんがくれたCMの絵コンテは
夏祭りで浴衣を着た女の子がシャボン玉を吹いていて
その泡が弾けた向こうにカバンを肩にかけた男の子が立っている
というものだった。
CMのショートバージョンだとそこで女の子と男の子が微笑みあって終わりなんだけど
ロングバージョンだとその後男の子の姿が消えてしまい
女の子が寂しそうな顔をして終わる
男の子が帰ってきたのは本当だったのか
それとも、幻だったのか
それはわからない…
そんな設定だった。
だったら俺は、その男の子の目線で歌詞を書こうと思った。
それは幻なんかじゃない。
男の子は女の子に会いに帰ってきたんだ、と。
(俺はハッピーエンドが好きなのだ。)
思い描いたのは
ラストダンジョンのような東京駅で新幹線に乗って岡山でしおかぜに乗り換え
そして新居浜に近づいていく予讃線の窓からの光景だった。
左側には四国山脈
右側には瀬戸内海
歌詞だとより叙情的にするために
鈍行の二両電車にしたんだけど
実際は特急しおかぜでした…
鈍行で帰ると高松から新居浜までで3時間くらいかかるのよ…
何年か前にお客さんから
あれは本当に二両電車で帰省してたんですか?
って聞かれたんだけど
盛ってました…!!
すいませんデシタァァアア!!!

ロックじゃない感じってことで
ストリングス入れたらどうかと
ビクターも勝負所ってことで
めちゃくちゃ予算を出してくれて
初めて生ストリングスを入れた。
しかもプリプロなのに。
ストリングスを入れる当日は
俺は1人キャンペーンで東京にいなかったので
メンバースタッフに任せたんだけど
みんなすごい感動してて
そこにいたかったなあ…

で、そうやってできた夏の匂いのワンコーラスを
監督はめちゃくちゃ気に入ってくれたそうで
伊藤さんは第1段階クリア!!と大変喜んでくれた。
監督は鼻歌まで歌っていたそうだ。
これはもう決まったな!!
と思った矢先
新たな問題が勃発した。

肝心のクライアントであるカルビーから
夏って言葉が入ってないんですよねえ…
と、クレームが来たというのだ。
夏って入れるなとか夏って入れろとか
あっちを立てればこっちが立たない
無理ゲー、無理ゲーなんです。
伊藤さんは心苦しそうだった。

でも天が俺らに少しだけ味方してくれた。
夏の匂いを気に入った監督は
クライアントのOKが出ないまま
夏の匂いありきでCMを撮り始めちゃったのだ。

それでも決定したわけではないので
一発逆転負けも十分にあり得た。

俺らなんとかコンペに勝てるように
ライブ先の京都で
願掛けのためにみんなで鈴虫寺に行ってお経を読んでもらったりお祈りしたりもしたなあ。

最終的にコンペは
LUNKHEADと、
日本人なら誰もが知ってるあの某コーラスグループの2つが机の上に残り
カルビーの社員全員による一騎打ちの決選投票が行われる事になった。
けど、それは俺らは事後報告で知ったので
その時は知らなかった。
ディレクターナベさんも、伊藤さんも
それでもし負けたとしたら…と思ったら
どうしても言えなかった…と。
その決選投票の日の朝
ナベさんも伊藤さんも胃が痛かったと後に言っていた。
なんつっても相手が悪すぎたのだ。
あの◯◯ ◯○◯だ。
後で聞いた時に血の気が引いた。

はてさて…決選投票の結果は…??
LUNKHEADは勝てたのか…?
夏の匂いは……??

後編に続く!!

(Vo.G.小高芳太朗)