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桜日和

カナリアボックスで、LUNKHEADどうしちゃったの、からの
恋をしているからの夏の匂いからの桜日和は、
ソリッドでやさぐれていたデビュー時の俺らを好いてくれてた人には
完全にLUNKHEAD変わったな
と思わせたかもしれない。
自分で振り返っても、この頃は
めちゃくちゃポップに寄ってると思う。
ぶっちゃけると俺らは売れたかった。
デビューして4年目
ビクターの同期のバンドはほとんどメジャー契約を切られていた。
俺らもヤバいな…という気持ちはあった。
夏の匂いでつかんだ流れを変えるのは好手ではない、という思いが
チーム内にあった。
そういう中で桜日和は作られていったけど
桜日和、いい曲なんだよなあ。
未だにメンバーみんなすごい好きな曲で
アレンジもすごい凝ってて
フォーキーなサウンドだけど
ギター4本くらい重ねてるし
アンサンブルもかなり練りこんでて。
ギターソロも実は悟のベースがハモリと合いの手で活躍してて
ギターソロというよりはギター&ベースソロみたいになってる。
歌詞も青臭いんだけど
いいんだよなあ。
LUNKHEADを結成して、一度きりの卒業ライブをして
俺はほとんど誰にも連絡せずにこっそりと抜け出るように上京した。
あの頃のことを思い出しながら歌詞を書いたんだ。

ビクターで打ち合わせの後、俺だけ雑誌のインタビューで抜けて
インタビューが終わって戻ってきたらみんなから
新曲のタイトル、桜日和ってどう?と言われた。
桜…かあ…とその時はあまりピンとこなかったんだけど
桜って、卒業とか旅立ちのイメージがあるから
旅立つにはいい日だ、と思ったら
桜日和ってすごくいいタイトルだなと思えてきた。
今ではとても気に入っている。

実は桜日和だけMVが2種類ある。
MVはいつもビクターの映像部門の三代さんという人が監督を探してきて
あれこれ打ち合わせをして撮っていた。
監督はディレクターと呼ばれ、三代さんはプロデューサーと呼ばれるポジションで
映像のことはあんまりよくわからないんだけど
そばで見てきた印象だと
餅つきで杵を持って餅ついてる人がディレクターで
介錯をしてる人がプロデューサーといった感じに思えた。
その三代さんからある日呼び出され
何も言わずにこれを見てくれ
と言われて見せられたのがひとつのクレイアニメだった。
スイスのクレイアニメ職人が作ったクレイアニメで
(クレイアニメ職人はスイスだと伝統工芸的なとても花形の職業らしい)
このアニメの使用の許可はもうとってある、と。
これでMV作りたい、と。
で、見てまず思ったのが
その頃松本大洋先生の鉄コン筋クリートが映画化されて大流行りしていたんだけど
あまりにその内容が鉄コン筋クリートに酷似していった、ということ。
これ、絶対パクリって言われますよ…と言ったんだけど
俺以外誰も鉄コン筋クリートを読んでなかったので
いや、大丈夫っしょ。とあっさり流され
あっさり採用となった。
そしてやっぱりパクリと言われた。

もうひとつは、アルバムLUNKHEADの変をしているツアーの番外編
変をしてきたと題した新居浜ジャンドールでのワンマンの映像と
次の日みんなで新居浜中をフラフラして撮ったドキュメンタリー的な映像を
ディレクターナベさんが編集して作ったやつ。
新居浜駅の立ち入り禁止ゾーンでこっそり撮ってたら職員に見つかり
これは怒られると思ったら職員さん達は遠目でチラッと見たまま
どこかに立ち去ってしまった。
えええ…大丈夫なんかい…
と逆にこっちが心配になった。
このドキュメンタリー風なMVがとてもよいのよ。
ライブ映像、俺めちゃくちゃニキビできてるけど
今となっちゃそれもよい。
もはやニキビなんかできやしねえ。

俺ら桜日和をリリースする前に初めてのビデオクリップ集をリリースしたんだけど
そのジャケットにいろんな動物の剥製が使われてて
このカワウソみたいなイタチみたいな動物は何ぞや?
って話してたら、マーモットっていう動物だってことで
何でそんなことになったかわかんないんだけど
そのマーモットを直球が買い取ってマモルくんって名前をつけて(安易)
桜日和のジャケットにも使われて(そしてきらりいろにも使われ結局FORCEのジャケットにも使われた)
っていう前置きがありつつ

この桜日和の発売タイミングで
スペシャモバイルの企画かな?
三ヶ月間毎週何してもいいっていう配信の企画を頂いて
考えに考え抜いて、悟が閃いたタイトルが
ときめき☆マモリアル
だったんだけど
今の人はときめき☆メモリアルってわからんのかなあ…
これは秀逸だってめっちゃ盛り上がったのよ…
今までの人はこんなんやってますって参考例の中の
THE BACK HORNの週刊ウレイボーイも秀逸なタイトルだったなあ

で、何やろう?って話で
メンバーリレー小説ってのにチャレンジしてみようぜ!ってなって
要はメンバー一人一人が順番に小説の続きを考えて書いていくっていう
どう考えても収拾つかんやろって企画なんだけど
これが、自分で言うのもなんだけど
大変よくできている。
俺は第1話を書いたけど壮、悟、龍と経由して戻ってくるので
どんな風に物語が進んでいくのか全然わからない。
新キャラが出てきたり、いきなりヒロインが留学してたり
いきなり主役が大阪で別の女とねんごろになっていたり
それでも最終的に見事に物語が完結して
すべての伏線がちゃんと回収されて
めちゃくちゃいい最終回だったと思う。
メンバーの言葉にも、西校だったり9クラスだったり(俺ら西校で9クラスだった)6速式の自転車だったりと、新居浜時代を彷彿とさせる描写があったり
逆に
他人よりも遠い、とか海の底の二匹の魚とか、明日は明るい日じゃないかもしれないとか
後々歌詞になっていく描写とかがあって面白い。
これ、最初は配信だけだったんだけど
何年か後にみかん祭の時に全話をまとめて紙にして
配ったのかな?
今ちょっと読み返すつもりが全部読み切ってしまった…。
全13話、なかなかのボリュームです。
多分だけど、俺ら全員愛媛から東京に出てきて
同じような感覚を共有できてたからうまくいったのかな?と思う。
これ、まだ持ってる人いるのかなあ…?

(Vo.G.小高芳太朗)