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極光

2018年秋
なんとなく、早めにアルバムタイトルを決めねば的な空気で
事務所でミーティングしてる時に
「オーロラ」というキーワードが出て
オーロラ…ええやん…!
おまえオーロラ見たがってたやん…!!
みたいな
何故か悟がノリノリで
一瞬アルバムタイトルは
「AURORA」になりそうな勢いだった。

だけど
曲タイトルもそうだけど
アルバムタイトルも
なるべくなら人と被りたくない。
だから一応検索したりする。
AURORA
めっちゃ出てくる……
ボツやわ……
というわけでアルバムタイトル
オーロラはボツになったけど
オーロラというテーマは良いな…
と思って
アルバムの中で
オーロラの日本語訳
極光というタイトルの曲を作りたいと思った。

オーロラ、見たいのです。
シガーロスの故郷のアイスランドで
オーロラを見るのが夢なのです。
みんなも、俺らの故郷新居浜で
新居浜巡りしてくれますやん?
そんな感じで俺も
シガーロスの故郷でオーロラ見たいのです。
でも、多分きっと俺は
見ないままで死んでいくのだろうなあ。
見たいなら見に行けばええやん
と思うけど
なかなかそんな時間は…今はない…

なんか、新しいアプローチはないだろうか
と思いながらリフを考えていた。
冒頭の山下君のダークなリフ。
6弦ギターのレギュラーチューニングだと一番低い6弦開放のEから始まる。
これいつも通りの感じだと
1オクターブとか2オクターブとか上で山下君がリフ弾いて
俺がバッキングギターを弾いて
悟がトゥルペトゥルペ弾きまくるのだろうけど
(実際、アウトロはそうなってる)
なんとか今までにない感じにしたくて
ほぼCD通りの雰囲気でデモを作った。
と、言っても
元ネタをバラすと
RADIOHEADのAir bagなんだけど。
でも、どうなるかなあ?ヘタしたらボツになるかもなあ?と思ってたら
意外にもメンバー全員の感触が良く
同じイメージを割とスムーズに共有できたので
アレンジはそんなに難航しなかった。
ただ、やっぱりリフの部分
山下ギターが低いので
いつもみたいに悟がトゥルペトゥルペ弾きまくると
リフとぶつかってしまって濁る。
悟は重すぎない?と言ったけど
リフが重いのだから、他もそこに付き合わないと
ただ好き勝手に演奏してるだけで
アンサンブルもなにもあったもんじゃない。
なので申し訳ないけど
リフの部分はひたすらルートだけ弾いて
オカズは一切なしにしてくれ
そのかわり、サビは弾きまくっていいから…
って折れてもらったんだけど
その代わり悟はすごいこだわってめちゃくちゃ主張の強い音を作ってきた。やはり一筋縄ではいかないやつだ…
で、俺もいつもみたいにコードバッキングをすると同じようにリフとぶつかって濁るのでバッキングは弾けない。
そんでいつも高い音を弾いてる山下ギターが鬼低いところを弾いてるので
全体的な音像で高い成分が桜井さんのシンバルしかない。
なので、高いポジションで
パッドっぽい音で
ミーシラミシラミシラミシラミシラ
ミーシラミシラミシラミシラミレシ
と弾いてるんだけど
聴感上はそんなに聴こえてはこないけど
結構このフレーズはキモで
全体的な重たくてメロウな
でも壮大で美しい雰囲気を作り出すのに
かなり役立ってる。
(よく聴くと聴こえる
ポンパポポパポポパポポパポポパポ
って音。わかるだろうか…でも、聴き取れなくても感じてるはずなので大丈夫)
この重く雄大なイントロからの
「垂れ込めた空が今にも落ちそうだった
街はまるで灰を被ったみたいで」
っていう、音と歌詞との融合が
すごく寂しくて虚しくて良い。
これはめちゃくちゃいい歌詞が書けたな!
と思ったね。俺は。はっきり言って。

間奏の
ギョェェエエエエ!!
ギュォォオオオオン!!
てところは俺がデジタルディレイを
山下君はなんかモジュレーターのエフェクターを
操縦して演奏してる。
と言われてもよくわからないと思うけど
よくわかんないけどかっこよし!
と思ってくれればそれでいいのだ。

間奏とアウトロのギターソロは
これぞ山下の必殺技とでも言うべき
泣きのギターソロで
本当にこういうソロ得意よね山下君は。
ギタリストはそれぞれ得意な技があると思うけど
速弾きだったりアルペジオだったり
カッティングだったりスリーフィンガーだったり
山下君はまあなんでもできるけど
特に泣きのチョーキングは彼の右に出る者はあまりいないと思う。

頭のバンドイン前と曲の終わりで
キャリンキャリンとした音が聴こえると思うんだけど
あれはジャズマスターのブリッジとテールピースの間の弦を鳴らしてそこにディレイをかけてる。
ジャズマスターにしかできない技法。
オーロラが空に広がっているアイスランドの風景をイメージしてんだけどどうかなあ?
まあ想像なんだけど。

あと、リフ、サビ、アウトロに
鉄琴も入れてる。
メメントモリの時に
はるなつあきふゆはると幻灯で使った鉄琴
ものすごく鋭くて高い音なので
音を柔らかくするために
苦肉の策でバチをティッシュで包んで演奏した。
これもほんとによく聴かないとわからないくらい小さく入れてるんだけど
やっぱりあるとないではキラキラ感が全然違う。

パポポパポポと鉄琴がある事で
全体的な音像の腰が少し高くなって
山下リフがより映える。

plusequalの中でいちばんシンプルだけど
いちばん凝った曲だと思う。
そしていちばん救いがなくて
いちばん綺麗な曲だと思う。

(Vo.G.小高芳太朗)