LUNKHEAD曲解説ブログ,  アルバム,  月と手のひら

魚の歌

魚の歌、実は、曲自体は地図の選曲段階からあった。
ディレクターのナベさんが気に入っていて
シングル候補ですらあった。
けど、結構アンニュイというか
メロウな雰囲気なので
シングルじゃないな〜って話になり
もしかしたら化けるかもしれないから…
というナベさんの淡い期待で地図には入らず温存された。

この曲も、難しい話をすると
まずイントロがD+69
ていう小難しいコード
でも押さえ方は3弦2フレットを押さえてあとは開放弦(6弦だけミュート)でかき鳴らすだけ
っていう、スケール的には、やっぱDなのかな?
よくわかんない
ここらへんは前後の辻褄で探るので
D+69だけ鳴らされても…感ある。
自分に。
でもAメロへの流れを考えるとやっぱD、なのかな?
どうでもいいけどね。
そしてAメロは
ハイライトの時にも書いた
CのメジャースケールなのにGのメジャースケール感。
これ、ブログを読んだ人のツイートで
ドミナントって呟いてる人がいて
つまり日本語だと属調
Cに対してのGのメジャースケールということなんだけど
メロディ自体はCのメジャースケール内に収まってるんだけど
「鮮魚売り場」の歌詞の中に経過音として
Fか、F#か、両方を入れて検証してみたら
F#がしっくりきたので
やっぱりここも
Cの属調のGにいってるってことだったんですね。
けどそこからすんなりCに戻るし
理屈はわかっても
やっぱりこれがなんですんなりいくのかわからない。
頭の中で鳴ったから、としか言いようがない。
俺は天才なのか?
いやいや、凡人です。

そんな魚の歌
もちろんその時はタイトルが魚の歌になるだなんて、俺もメンバーも、ナベさんもボビーも、魚だって思ってなかった。

体温のブログで書いたけど
地図が出て俺はあっけなく打ちのめされ
社会的にダメな人間になってた。
コカインや覚醒剤に手を出す資本力も度胸もないので
とりあえず朝から湯船でブランデーを飲んだり
風邪薬を飲んでウイスキーを飲んだりしていた。
当然ほとんど一日中酔っていた。
完全に逃げていた。

そんなある日、スーパーに行ったら
魚売り場の魚と目が合った(気がした)
サンマだった(秋だったのだ)
旬のサンマのくせに100円引きとかもう終わってるじゃん、と思ってたら
「オマエモナー」と言われてるような気がした。

そしたらなんかグワッ!と
あの歌詞が降ってきた。

次のスタジオ練習の時にメンバーに歌詞を見せた。
見せる前に、
タイトル、魚の歌になったから
と言ったらみんな
お、おお、それ大丈夫…?
となったけど(当然だと思う)
歌詞を読んだらみんな
これは…すげえな…と納得した。

その後なんかの用事でボビーがうちに来た時に
同じように
タイトルが魚の歌になった
と伝えたら
え…それ大丈夫…?
と不安そうだったが
やはり歌詞を読んだら
これはヤバいね…と唸った。
これはもう…アル中の歌じゃなくて
シャブ中の歌だよ…
とよく言っていた。

ナベさんは、苦笑していた。
歌詞を読んで
シングルの道は諦めたようだった。

レコーディングの際
冒頭にフリーの素材でスーパーの喧騒の音を加えてるんだけど
最後に女の子が「ハンバーグ?」と言ってて
それがありかなしかで揉めたってほどでもないけど
シュールで面白いから採用になった。
子供!魚食えや!って警鐘もこめつつ。

そんで、ここで鳴ってる手拍子が
実は手じゃなくて
グッド・バイのブログに書いた
パンイチ太ももスタイルってわけです。
手も入ってるかもだけど。

なんだかんだ
LUNKHEADの裏番長的なポジションで
知る人ぞ知る存在として
生き延びてきた感がある。
歌詞がラリパッパ過ぎて
暗いようで、もはや開き直ってるので
ライブでやってもあまり暗い雰囲気にならず
逆にみんな
ウェーイ!!(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎
的な
ダウナーパリピとでも言えばいいのか…
そんな感じで楽しくやれる
気怠いダルな曲です。
だけど、ただ気怠いだけじゃない
秘めたる熱さもあるし
悔しさも虚しさもある
やっぱりそこは
LUNKHEADなんだなあ、と
ある意味、信頼もしてます。
ドラムで繋ぐことが多いけど
桜井さんが、結構楽しそうなんだよなあ

月と手のひらリリース後
あのロッキング・オンの渋谷陽一のラジオ番組に呼ばれた時
渋谷さんはしきりに魚の歌魚の歌と言ってくれた。
あまつさえインタビューの中で
魚の歌みたいな曲作ってる場合じゃないですよ!なんて言うから
冗談で
そんなに魚の歌好きなんですか?
と聞いたら
大真面目な顔で
はい、好きです
と言ってくれた。
あの時は震えたな。

(Vo.G.小高芳太朗)