自分を愛すと決めたんだ
着メロ機能はあれだけ駆使できたのに
シーケンサーは全然使わなくなってしまった。
デカくて手軽じゃないのだ。
デモ作ったからってメールでぽいっと送れるわけじゃないし。
というわけで
この頃はもっぱら
スタジオに入ってギターを弾いて
思いついた曲をみんなに説明していた。
自分を愛すと決めたんだは
重厚なリフから始まってそこに
Gadd9 F#m7が絡んでいく。
これがなかなかみんなに伝わらない。
そのリフにコードがつくの?
みんなでそのリフ弾けばええんじゃないの?
みたいな感じでピンとこない。
俺の頭の中では鳴ってるんだけど
それを説明するのが難しい。
とにかくこのリフを覚えてくれ
と、壮に教えて
それをずっと弾いててもらって
悟はGとF#と弾いてもらって
みんなで合わせて
やっとみんな、なるほど〜と納得してくれた。
サビで音がスカスカになるっていうのは
この曲だけかもしれない。
だいたいサビでドカーンとなっちゃうから
歌詞は後で書いたのに
元々この言葉があって
この言葉のためにアレンジしたかのように
音と言葉が見事にハマったと思う。
その日、俺と悟とアーティスト担当の姉帯さんは
プロモーションで札幌にきていて
夜、ジンギスカンを食べていた。
そこで姉帯さんが
おまえらに本物のショーを見せてやる
と言い出して
俺らはすすきののショーパブに連れて行かれた。
(ショーパブは店員の女性がみんなニューハーフのキャバクラ、みたいな感じです。ざっくり言うと)
そこで体験したことは
人生観を変えたと言ってもいい。
正直、入るまでは尻込みしていた。
怖いもの見たさでもあった。
そんな自分が恥ずかしくなるほど
みんな凛として美しかったし
明るかったし面白かった。
話を聞くと
昼過ぎにお店に入って
夕方まではショーの練習
そこからお店がオープンして
一晩にショーが2回あるので
それが終わるまではお酒禁止
朝5時にお店を上がって帰って寝支度して
そしてお昼に起きてまたお店へ
の日々だと。
めちゃくちゃ大変だと思ったけど
まあ、大変よね〜
と言っていたけれど
それでもみんな
本当に生き生きとしていて輝いていた。
そして綺麗だった。
綺麗でいることがきっとアイデンティティなんだろうと思った。
綺麗でいる今の自分が本当に幸せなんだろうということが伝わってきたし
そのために尋常じゃない努力をし続けてるのも伝わってきた。
そしてショーがまた凄かった。。
完全にプロのダンスショーだった。
さっきまで隣でケラケラと冗談を言っていた人達とは思えないほどかっこよかった。
初体験の俺らと違って
百戦錬磨の姉帯さんでも言葉を失っていた。
(六本木の一流店よりもショーがすごかったと後で言っていた)
お店の中には俺らも含めておじさんが20人ぐらいだっただろうか
みんな酔っ払ってて
それっぽっちの連中を相手に
一切の妥協がなかった。
彼女達は全身全霊で踊って
全身全霊で輝いてた。
もっとたくさんの人に感動してもらうべきショーなのに、と、なにひとつ努力してない俺が思う資格もないけど、思ってしまった。
そんなわけでお店を出た時は
3人ともすっかり目がハートになっていた。
宿に戻ってすぐ歌詞を書いた。
毎晩毎晩
たった数十人の酔っ払いの前で
なんであんなに幸せそうに輝けるのか
そこに未来はあるのか
いろんなことが頭の中をぐるぐるしていた。
それでも彼女達は
自信とプライドと前向きさに溢れていた。
自分の人生は自分で切り開く
自分の人生は自分が肯定する
そういう覚悟に溢れていた。
(Vo.G.小高芳太朗)