LUNKHEAD曲解説ブログ,  アルバム,  月と手のひら

蝉は、俺が作ってきた百何十曲の中で
いちばん変な曲かもしれない。
最初に浮かんだのはサビのコード進行だった。
できた時、自分でもどうしても
後半3つ目のコードがなんなのかわからなかった。
ただ、頭の中では鳴ってて
DM7/D#的な解釈で弾いていた。
今、たった今検証してみて
どうもあれはD#m7くさい
という気がするんだけど
そうじゃない気もする。
わからん……
ただ、ぐっときた。
Bm7 C#m7 DM7
F#m E D#m7 DM7
的な?
ポップでもキャッチーでもない。
けど好きだ。
あと、リフも変だ。
ベースが
F# G# A G# F# G# A B
ときてるところにギターは
A B C# B A B C# E(プラス5度)
が当たってる。
かなり変だけど
なんかちゃんとして聴こえる。
不思議だ。
曲としては完全に
俺の中のナンバーガールとミッシェルガンエレファントがせめぎあっていたと思う。
コード感とかはナンバーガールだけど
出だしのベースとドラムの感じとかミッシェルぽいし
1番と2番の間のギターソロも途中妖しいスケールに行くところがちょっとだけミッシェルのゲットアップルーシーのソロぽくて好きだ。

頭のベースとドラムだけのところで
俺がなんか言ってるのは
もしかして
マイケルジャクソンの偉大なる空耳アワーの名作
パン茶宿直ですか?
と、結構前に週刊少年ランクでメールが来たけど
まさか
13年の時を経て気づいてくれた人がいたとは。
まさにその通りです。
壮がVHSに録画した空耳アワード2001を
二人で何度も何度も見た。
上井草のうちのアパートで。
何回見てもゲラゲラゲラゲラ笑った。
壮が泊まりに来る度に見ていた。
ほんとに10回以上は見てんじゃないだろうか。
伝説の回、空耳アワード2001
歴史に名を残す空耳が沢山あった。
それを、オマージュしてしまったのです。

マイケルジャクソンのスムースクリミナルという曲だそうです。
わしゃしらん
壮は知ってたけど。

しかもエンジニア佐藤さんの本気の悪ノリで
ご丁寧に宿直のところは左右にパン振られてるし。
チョーカッケー

歌詞は
そう、歌詞は
2000年の夏かな
まだ新居浜に実家があった頃
(それも、厳密に言うと新居浜時代暮らしていた家ではなく、単に両親が新居浜にいた、というだけ)
夏休みに帰省した時の話
出かけて帰ってきたら玄関のそばに蝉が仰向けで転がっていた。
足がまだ動いてたので
指を近づけたら
ガシィィイイッ!!!
としがみついてきた。
死にかけとは思えない
すごい力だった。
そしてなんとか飛ぼうとするんだけど
やっぱりすぐ落ちちゃう。
そんでまた指を近づけると
ガシィィイイッ!!!
そんでまた落ちちゃう。
で、指を近づけると
ガシィィイイッ!!!
そんな蝉が
俺はなんだか
めちゃくちゃカッコいいなと思った。
ダメでもダメでも諦めない。
届かなくても飛べなくても
空だけを見ている。

20歳の小高青年はその時
俺もこういう風に生きたい、と思った。
(奇しくも…19年後…君はそういう感じになりつつあるよ…良くも悪くも…)

そして、蝉は木の幹に預けて
家に入ってすぐに
ノートに思ったことを書いた。

それが巡り巡って4年後
めでたく蝉の歌詞になったってわけであります。

20周年の間にやりたいなあ

(Vo.G.小高芳太朗)