ENTRANCE 〜BEST OF LUNKHEAD age18-27〜,  LUNKHEAD曲解説ブログ,  アルバム,  シングル,  体温,  月と手のひら

体温

体温は、白い声と同じくらい
LUNKHEADにとって初期の代表的な曲だと思う。
最近、若いバンドマンにLUNKHEAD聴いてました!って言ってもらう事が本当にたくさんあるけど
体温が好きです!って子がやっぱり多い。

原型は2003年の年末にあった。
山中湖に曲作り合宿に行ってた時にできたんだけど
ボビーが、Aメロはすごくいいんだけどサビが弱いな〜と言うのでボツになり
地図には入らなかった。
ちなみにその時の仮タイトルは
「かずまさ」だった。
ボツになったサビが小田和正さんぽかったから。
さらにちなみにそのサビの歌詞は
「君はそっと心に 僕の居場所を見つけてくれた」
だった。
未だにメロディも鮮明に残ってるけど
きっと世に出る事はないのだろう。
もしも、万が一、またソロアルバムを作る時があったら
使ってみようかな。

地図がリリースされて、俺はすっからかんになった。
ある意味1stアルバムって
インディーズベストみたいなところがあるので
過去の財産でなんとかなる。
そこからが地獄だった。
今までみたいにのらりくらり
できた時にできるんじゃなく
作るために作る。
初めてのことで
俺はさっそく打ちのめされた。
作るために作る。
出ないうんこを無理矢理出すような。

ほとんど鬱状態で
朝から風呂に浸かりながらブランデーを飲んだり
風邪薬飲んで酒飲んだりしていた。

その頃
太宰治ばかり読んでいた(今思えば、余計に鬱になりそう…)
そしてボビーが俺のバイブルだから読め!と全巻(半強制的に)貸してくれたサラリーマン金太郎も読んでいた。
真逆のようだけど
俺の中で何故か太宰と金太郎がリンクした。

ある日の真夜中だった。
なんとなく自分の手を耳に当てた。
轟々と血が流れる音が聞こえた。
(君の手ではなかった…そこは盛った)
なにもしてない
ただ存在してるだけなのに
体の中ではこんなにも命が蠢いている。
生きるって凄いことだなあ、と思った。
飛び起きて歌詞を書いた。

サビの、こんなにもこんなにも、のところの字余り感が、ちょっと気になってたんだけど
それが逆に切迫感があって凄くいい、と龍が言ってくれたなあ。

MVはまだ開通する前の新東名高速道路の静岡県清水市あたりのトンネルで真夜中に撮った。
監督の池田さんの出身地で、地元のお友達がたくさん車のエキストラで来てくれた。
普通に、
この線から出ると死にまーす!
と言われて、なかなかスリリングな撮影だった。。
そしてこのMV
実はエンディングから逆の時系列で撮影されていっている。
だから、よく見るとエンディングがいちばん髪型が整っているのだ。。

MVもパンチがあって今見ても凄いかっこいい。
一体…いくらかかってるんだろうか…

この曲ができて
俺は本当にプロになった気がした。

その時はわからなかったけど
当時直球にはスカちゃんという経理のお姉さんがいた。(いた、というより、直球にはボビーとスカちゃんしかいなかった)
そのスカちゃんがなんと体温の発売日に出産した。
そしてスカちゃんが言ったのが
まさに体温の歌詞が
子供に対して思う事そのものなんだよ!
生きてくれてるだけで涙が出るんだよ!
って事だった。
今ならわかる。
そうやって
だいぶ時間が経ってから曲の本当の意味が自分自身でも解ったりする。
のりちゃんが死んでから
またさらに思いが強くなってしまった。

体温、ライブだと盛り上がるけど
泣いてる人も多い。
泣きながら盛り上がってる人もいる。

最近衣装をお借りしているEGO TRRIPINGのイワタさんが
去年のストリームホールに来てくれた。
体温の時にまわりの人がみんな泣いてて
きっとこの曲はメンバーにもファンにも
特別なんだろうな、と感じたと。

あなたにとって特別な曲だったら
嬉しいなあ。

(Vo.G.小高芳太朗)