LUNKHEAD曲解説ブログ,  シングル,  ひとりごと

上弦

白い声のレコーディング中、コンソールルームでエンジニアがなにか作業していて
ちょっとした事なので
各メンバーは各々のブース内で待機している
という時間があった。
なんとなくギターを弾いていたら
上弦のリフの部分のリズムギターが浮かんで
なんかいい感じだな〜と思いながら
繰り返し弾いていた。
ブースで各々の音は遮断されてるけど
ヘッドホンからはメンバーの演奏する音は聞こえるので俺の弾いてるギターももちろんみんなに聞こえている。
そしたらみんなが俺のギターに乗っかってきて
そのままあのリフの部分ができてしまった。
これいいじゃんと思って
ずっと覚えてて
それを元に曲を作っていった。

よく歌詞に新宿が出てくるけど
この曲も名前は出してないけど
「光に溺れそうな街の片隅で
熱に浮かされた景色」
は、ザ歌舞伎町の景色だ。
歌舞伎町はあの頃まだカオスで
夜中でもギンギンに光り輝いていて
欲望という欲望と、暴力的で退廃的な空気と
そして寂しさが溢れていた。
歌舞伎町に行くと
まるで透明人間になったような
何者でもないことを許されるような
本当の意味で独りになれるような気がして
好きだった。

寂しい歌詞だけど
情景をとても美しく表現することができて
それがストーリーの寂しさを一層際立たせて
曲の淡々としたアレンジとも相まって
なんかショートムービーを見てるみたいで
未だにとても気に入っている。
最後君が何を言ったのか
実は、思いつかなかったので
苦し紛れに、聞き取れなかったことにしたんだけど…
それが逆によかった。
あの謎感が曲全体の雰囲気を一気にミステリアスにしたと思う。

よくライブに来てくれてた大学の写真部の先輩に歌詞を見せたら
「上弦」という名前をつけてくれた。
上弦は満月に向かっていく時の弓張月のことだ。
(逆に下弦は新月に向かって欠けていく時の弓張月)
この曲の主人公の未来が
満ちていく月でありますように、と。

(Vo.G.小高芳太朗)