ひとりごと
2002年の頭だった。
スタジオでみんなでジャムってて
お!これはなんかいい感じじゃないか?
となったフレーズがあって
それを元に曲を作っていった。
が
できた曲をアレンジしていくうちに
ジャムってた感じはどんどん削られて
結局アウトロの部分だけになってしまった。
今君が泣けてよかった
の後の
D7/G C/Gのところ。
ボビーがたいそう気に入っていて
絶対シングルで出したいからということで
地図には入らずとっておいた。
で、満を持して2004年秋にシングルで切ることになったんだけど
とにかく曲が長い。
8分くらいあるので
ライブでやるにも大変だし
ラジオでフルで流れることはまず難しい。
なので、要は全然シングル向きじゃない。
この曲も根岸さんにプロデュースしてもらったので
まず最初に曲の長さの話になった。
削れないものか?と
でも、今聞き返しても
ひとりごとはとてもよくできた曲で
ラブ・ソング、ゲノム、幻灯等
LUNKHEADで大陸系(と自分達で呼んでいる)の曲は
飽きさせないために静かに始まってだんだん熱を帯びていって最後どかーん!みたいな展開がもはやお家芸的になっているけど
ひとりごとはまさにそれを確立させた曲だと思う。
アレンジもすごい。
21歳でこれを作った俺達はなかなかヤバい。と、38歳の俺は思う。
しかも歌詞がまた削りようがないほどひとつなぎのストーリーなので
根岸さんは
わかった。このままでいこう。
と納得してくれた。
アレンジに関しては細やかな部分は独り言バージョンと大分変わったけど
大まかなところは変わっていないと思う。
曲の精神性を尊重しているというか。
あと、この曲は悟がひたすらGを弾き続けている。
イントロからAメロ全部G
G田がGを…
ハイポジでトゥルペトゥルペもせずに…
あのG田の忍耐のGがこの曲を厳かに荘厳にしていると思う。
そしてギターはかなりオーバーダビングしているので
もちろんライブでは端折って
俺と壮で必要な音をライブアレンジしてるんだけど
ライブのアレンジもすごい気に入ってるので
REACT3をいつか作るとしたら再録したいなあ…
当時は今みたいにデータをメールでポンできた時代じゃないので
ミックスダウンというと
当日スタジオにみんなで出向いて仕上がるのを待っていた。
(今は、あれやこれやこうして欲しいことを直してもらう段階までデータでやりとりして、当日立会いの時間をできるだけ減らすのが一般的だ。時間も予算も大幅に減らせるのだ!)
とりあえず仕上がるまで俺らはスタジオに入れてもらえない。
エンジニアとプロデューサーがミックスしてるところに俺らが加わっちゃうと
船頭多くして船山に登る
というわけだ。
だいぶ時間がかかっててかなり遅くなったころ
根岸さんが顔を真っ赤にして出てきた。
それはもう文字通り顔を真っ赤にして。
おい!すごいのできたぞ!
おまえらにはもったいないぐらいすごいのできたぞ!!
根岸さんは大興奮していた。
何度も言うけど
根岸さんて超大物プロデューサーなんです。
俺らみたいな小物、適当にやってても誰も文句言わないのに。
けどやっぱ、ただのバンドマンなんだなあ
目の前のものをとにかく最高に仕上げたい。
上も下も何もない
ただ、それだけなんだなあ、と。
だから超大物なんだなあ。
そうやってひとりごとは世に出た。
そして
すんごい売れなかった。
ビビるほど売れなかった。
やはり…曲が長すぎたようだ…
歌詞は、LUNKHEADの数ある曲の中でも
とても優しい歌詞だと思う。
だけど、タイトルが「ひとりごと」なのは
それを「君」に直接言う勇気がなかったから。
1/21のCLUB QueのMCでも話したけど。
俺はそれを口から出せず
ただ思っていた。
けど、今はちゃんとあなたを思って歌ってる。
あなたが俺の言葉を受け止めてくれるから。
セールス的には大失敗だったけど
今もとても大事な曲だ。
長すぎてたまにしかできないけど…
あと、MV撮る時もだいぶすったもんだがあって
三月のMVがすごくよかったので
そのままひとりごとも三月撮ってくれたチームに頼んだんだけど
初のドラマ仕立てのMV、やっぱり曲のイメージ通り傷を抱えた女の子を主役にしたいと思っていた。俺達は。
しかし撮影チームが提示してきた主人公像は
奥さんを亡くした初老のおじさんだった。
いやいやいや!
そこは違うでしょ!
狙う部分間違えてるでしょ!!
と、ビクターの会議室で揉めに揉めた。
結局、撮影チームが折れた(と思っていた)ら
頭こそ女の子の割と衝撃的なシーンから始まるものの
ラスサビのいちばんいいところで
しれッ…と主役が女の子のお父さんにすり替わっていたのだ…
「どれだけ強がって自分に嘘をついて
孤独を押し殺して笑い続けてきたんだ」
薄暗い蛍光灯の下
奥さんの遺影を前にコンビニ弁当を食べるお父さん
結構本気で絶句した。
ビデオクリップ集持ってる方はそこ注目して見直してみてください。
あとMVのチェック中に
2Aの終わりあたりで
オォォォオオオオ…
っていう呻き声みたいな怪音が聴こえて
騒然としたっていう裏話。
ミックスダウンの時も気づかなかったのに…
なんだなんだ!?と検証してもらったら
どうも…ギターのノイズがいろんな音と混ざって
そういう風に聴こえたんじゃないか、と
いうことでした。
ほんとかな??
信じるか信じないかはあなた次第…
(Vo.G.小高芳太朗)