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ブラック・ミスティ・アイランド

なんつうかこう、アーバンな曲を作りたかった。
アーバンな曲とはなんぞや??
なんつうかさ、こう
青臭い泥臭い感じじゃない
ジャジーでオシャレでキザな感じの曲
結局、そんなにオシャレでもない曲になったけど
俺らにしてはがんばった。
イントロからAメロBメロはメジャーA
サビからリイントロはメジャーC
2サビ後の間奏がメジャーA
ラスサビからアウトロがメジャーCで
最後の最後にF#m7でメジャーAに転調して終わる。
メジャーAとメジャーCを行ったり来たり
メジャーCはマイナーAの平行調なので
メジャーAとマイナーAの同主調ってやつ
この転調はすごく美味しくて
わかりやすく壮大になるので
LUNKHEADの曲でもめちゃくちゃ使われているんだけど
この転調に出会ったのは
バンプオブチキンのLAMPだった。
ただ、LAMPはサビで転調!とかじゃなく
Bメロの真ん中で突然転調する。
そのセンスってちょっと真似できない。
ちなみにCメジャーでギターソロを弾く時はだいたいAのペンタトニックスケール(Aマイナー=Cメジャー)で弾くと収まりが良いんだけど要所要所でCのペンタトニックスケール(Cマイナー)を加えるとエモいギターソロになるっていうのもバンプオブチキンに教えてもらった。
これも同主調だなあ。

アーバンといえば新宿
アーバンといえば歌舞伎町だった。
夢と欲望と成功と
暴力と挫折と諦めと
理不尽と無慈悲と
華やかさと死と
全部が詰まった街が歌舞伎町だった。
どれだけ満ち足りても百になれないほど
てっぺんは果てしなく
どれだけ失っても零になれないほど
ぽっかり空いた穴は暗く深かった。

学生時代
路上ライブをしたくて
そのために発電機がほしくて
ケバブ屋の屋台のトルコ人に龍が話しかけて
そんで発電機を売ってもらって以来
コマ劇前のケバブ屋の屋台に夜な夜な入り浸るようになった話は
何度もしてるので
知ってる人も知らない人もいると思うけど
本当にたくさんの人にあった。
ヤクザ、チンピラ、風俗嬢、外国人、浮浪者、警察
歌舞伎町は今よりもずっとカオスだった。
すぐ先で学生がチンピラに殴り殺された事もあった。
風俗ビルが火事になって何十人も亡くなった事もあった。
ケバブ屋で店番頼まれてる時
浮浪者が肉くれよって
ゴミ箱から拾ってきたマックの飲み物のカップを差し出してきたりもした。
客引きをしてる若者を見て
ヤクザの偉い人がため息つきながら
あいつらもかわいそうになあ…
と呟いた事もあった。
闇金に手を出して
首が回らなくなって
こき使われてるらしい。
もちろんカタギになんて戻らせてもらえない。
今思うと相当エキセントリックな日々だったし
よく俺無事だったなと思うけど
友達になったトルコ人が歌舞伎町内の屋台やってる外国人達の組合長みたいな偉い(しかもテコンドーの先生の資格持ってるぐらい強い)人だったり
歌舞伎町のヤクザは本当のプロなので
無害な俺らみたいなのにはめちゃくちゃ親切でジェントルだったってこともある。

そうやってラッキーなことに
めちゃくちゃ貴重な体験をしたし
貴重な景色を見てきた。

歌詞に出てくる褥「しとね」は
布団、とか寝床って意味なんだけど
歌舞伎町を寝床にしてる人達をたくさん見てきて
そこの華やかな人達
鳴り響く音、喧騒を
詩と音
諦めてしまってる人達
虚ろで、惨めで、それを
死と根
って書けたところが
とんちが効いててとても気に入ってる。
あと最後の
ボトルを慕と流にしたのは
お酒ってどんなに慕っても流れ出ていっちゃうよな…って思ったから。

意外と知らない人もいるけど
ブラック・ミスティ・アイランドは
黒霧島、です。
ダジャレかよ!!
でも、黒くて霧がかった孤島って
なんだか歌舞伎町みたいだなと思って。

(Vo.G.小高芳太朗)